- けむ
- I
けむ(助動)〔終止形・連体形は平安中期以降ケンと発音されるようになり, 「けん」とも書かれた〕活用語の連用形に付く。 過去の事実を推量するのに用いる。(1)明確でない過去の事実を推測する意を表す。 …ただろう。 …だっただろう。
「昔こそ難波ゐなかと言はれ〈けめ〉今都引き都びにけり/万葉 312」「空よりや降り〈けん〉, 土よりや湧き〈けん〉/徒然243」
(2)過去の事実を表す語に付いて, その原因・理由などを推量する意を表す。 …たのだろう。 …だったのだろう。「うき世にはかかれとてこそ生まれ〈けめ〉ことはり知らぬわが涙かな/増鏡(新島守)」
(3)過去のことを伝聞したということを表す。 …たとかいう。 …だそうだが。「布留の滝は法皇の御覧じにおはしまし〈けむ〉こそめでたけれ/枕草子 61」
(4)婉曲に表現するために用いる。「なほも翁の年こそ聞かまほしけれ。 生まれ〈けむ〉年は知りたりや/大鏡(序)」
〔「けむ」の語源については, 過去の助動詞「き」の未然形の古形「け」に推量の助動詞「む」の付いたもの, その他の説があり, 確定しない〕IIけむ【煙・烟】〔「けむり」の略〕「けむり(煙)」に同じ。~に巻・く信じがたいことや相手がよく知らないようなことを言って, 相手の判断力を狂わせる。
Japanese explanatory dictionaries. 2013.